消防設備業を主な業務としている当法人ですが、2026年度より新たに免震建物における免震装置・免震層の点検も実施しております。
消防設備点検でも大規模なビルなどの免震層に入ることは多く、そうした中「免震装置の点検は出来ないか?」という相談を受け、この度の事業化となりました。
免震建物における免震装置、また免震層の点検は現時点では法定点検ではございませんが竣工時、竣工から5年後、更にその5年後(竣工より10年後)、その後は10年毎に点検することが推奨されています。
また大きな地震の後(概ね震度5以上)などにも装置の異常の有無を調べるために臨時の点検(応急点検)が強く望まれます。
当法人では竣工から5年目以降における定期点検、応急点検を中心に業務を行っています。
免震建物の点検には専門的知識が必要となることから、点検には「免震建物点検技術者」を持つ者が行うことが強く望まれています。
同資格は「一般社団法人日本免震構造協会」が認定する民間資格ですが、現状、国内で免震建物点検を専門的に行える唯一の資格であり、公共建物における免震装置の点検においても同資格の保有者による実施が明文化されるなど、事実上、公的資格としての評価を受けています。
近年では一般の戸建住宅においても免震建物が増えてきており、そうしたものを含めれば現在、国内に1万棟を超える免震建物が存在し、同資格を持つ技術者の需要は今後更に高まっていくことが予想されます。
主な免震装置と点検内容を下記に示します。
積層ゴム支承は、建物と基礎の間に設置され、地震時の揺れを水平方向に大きく変位させることで、上部構造に伝わる地震力を低減する免震装置です。
ゴム層と鋼板を交互に積層した構造により、鉛直方向には高い支持力を持ちつつ、水平方向には柔らかく変形する特性を持っています。
- ゴム表面のひび割れ、硬化、剥離、膨れ
- 鋼板部の腐食、錆、変形
- 支承全体のずれ、偏心、沈下の有無
- 周囲部材との干渉や異物の侵入
- アンカーボルト、取付部の緩み・腐食
滑り支承は、建物と基礎の間に設置され、地震時の揺れを摩擦の小さい滑り面で水平方向に滑らせることで上部構造に伝わる地震力を低減する免震装置です。
ステンレス板と低摩擦材(PTFE等)を組み合わせた構造が一般的で、地震時の変位を滑り運動として吸収します。
復元力が小さいため、積層ゴム支承など他の免震装置と併用される場合もあります。
- 滑り面の傷、摩耗、損傷の有無
- 摩擦材(PTFE等)の劣化、剥離
- 異物混入(砂・塵・油分など)の有無
- 鋼材部の腐食、錆、変形
- 支承位置のずれ、偏心の有無
- アンカーボルト、取付部の緩み・腐食
- 周囲部材との干渉の有無
直動転がり支承は、レール上を転動体(鋼球など)が直線的に移動する「転がり機構」によって、建物に伝わる地震動を低減する免震装置です。
地震時には建物と基礎の間で支承がレール方向に滑らかに移動することで摩擦抵抗を大幅に低減し、地震エネルギーを効果的に逃がします。
移動方向がレールにより明確に制御されるため挙動が安定しており、構造が比較的明確で点検・維持管理が行いやすいことが特徴です。
当法人では主に以下の項目について確認を行います。
- 支承本体の変形・損傷の有無
- レールおよび転動部の摩耗・損傷・腐食状況
- ボルト・固定部の緩み、損傷の有無
- 可動範囲の確保状況および障害物の有無
- 異物混入や潤滑状態の確認(必要に応じて)
これらを総合的に確認し、免震性能が適切に維持されているかを判断します。
オイルダンパーは、地震時の揺れのエネルギーを油圧抵抗によって熱に変換し、建物の揺れを減衰させる装置です。
ピストンの往復運動により内部の作動油が流動抵抗を受け、これが制振力として働きます。
- 作動油の漏れ、にじみの有無
- シリンダーやロッドの傷、腐食、曲がり
- 取付部(ピン・ブラケット等)の緩み、摩耗
- シール部の劣化
- 可動範囲内での干渉・異音の有無
鋼材ダンパーは、鋼材の塑性変形を利用して地震エネルギーを吸収する制振装置です。
地震時の変形により鋼材が意図的に降伏し、その変形エネルギーを熱として消費することで、建物の揺れを低減します。
安定した履歴特性を持ち、繰り返しの地震動に対しても一定の減衰性能を発揮します。
- 鋼材部の塑性変形の有無、変形量の確認
- 亀裂、割れ、局部座屈の有無
- 溶接部・ボルト接合部の緩み、損傷、腐食
- 表面の錆、塗装劣化
- 周囲部材との干渉の有無
鉛ダンパーは、鉛の塑性変形(元に戻らない変形)を利用して地震エネルギーを吸収する装置です。
繰り返し変形しても安定した履歴特性を持ち、地震時の揺れを効率的に減衰させます。
- 本体外観の変形、損傷
- 鉛部周辺の異常変形
- 取付金物の緩み、腐食
- 周囲部材との干渉
- 設計変位を超える変形痕の有無
この他、前述した各種のクリアランス(建物外周を含む)また渡り廊下などに設置された免震エキスパンションジョイント(地震の揺れに追従する床材)なども点検の対象となります。
このように免震建物点検では各免震装置のみならず、各種のクリアランス(地震の揺れによる周囲との干渉を防止する為の一定の空間)、免震層内における各種電気配線の余長など多岐にわたる為、点検技術者には建物について広範囲の知見が求められます。
当法人では免震建物点検技術者のみならず、特定建築物調査員、消防設備士、また宅地建物取引士といった国家資格を併せ持つ者が点検を実施することで複合的かつ総合的な点検を可能としています。
また当法人ではあくまでも点検上の不備を挙げるに留め、それら不備の改修などまでは受けないことで第三者としての「客観的な視点」で業務を行うことを重視しています。
費用については建物の規模、免震装置の数、また免震層内の環境(作業に十分な空間や照明装置の有無)などにより大きく異なります。
また竣工時における各種免震装置の計測値などを表示した資料や前回点検時の報告書(書式問わず)の有無などによっても変わってきます。
先ずは一度ご相談下さい。









